神奈川県内で見ることができる淡水魚の図鑑です。
五十音順に掲載されています。

説明文は上から①分類、②形態、③分布、④生態、⑤その他の情報、となっています。

魚種は随時追加していきますので、お楽しみに!

  • ナマズ目アカザ科アカザ属
  • 全長8~15㎝。体色は赤褐色で細長い。髭は4対8本で、背鰭と胸鰭の棘には毒があり、刺さると痛い。
  • 日本固有種で太平洋側は宮城県以南、日本海側は秋田県以南の本州、四国、九州に分布する。
    神奈川県の現在の生息地は、相模川水系のごく一部の支流に限定され、まさに絶滅寸前である。
  • 河川の上流域から中流域にかけて生息するが、礫石が多い水域を好み、大石の下やその間に潜んでいる。夜行性で夜間に底生動物などを食べている。産卵期は春から初夏で、石の下に産卵し、雄が卵を保護する。
  • アカザは近年の研究で遺伝的に異なる2タイプが存在する可能性が示唆されており、神奈川県の個体群も今後は解析を行う必要がある。また、岩手県や東京都の多摩川水系秋川の個体群は、国内移入種とされている。
  • コイ目コイ科アブラハヤ属
  • 全長8~15㎝。体側に黒と金色の縦帯が入る。繁殖期の雌は、吻がへら状に伸長する。
  • 青森県から岡山県の太平洋側と、青森県から福井県の日本海側に生息する。
    神奈川県内では、過去には各地の谷戸や支流、渓流域、湧水の入る河川本流域において普通の魚であったが、河川環境の悪化により生息地が減少している。現在は主要河川の源流域と支流域に分布が狭められ、本流域には少ない。
  • 河川の上流域から中流域にかけて生息するが、通常は群れを形成している。雑食性で底生動物、付着藻類、落下昆虫などを食べている。産卵期は春から初夏で、淵や平瀬の砂泥底・砂礫底に集団で産卵する。
  • 本種と近縁のタカハヤは、関東地方ではほとんど自然分布域は重ならず、アブラハヤのみが生息していた。しかし、神奈川県の西部の一部河川では、同所的に2種の生息が確認されており、これらの地域のタカハヤは人為的な放流による可能性もある。
  • カジカ目カジカ科Rhenopresbe
  • 全長20~30㎝。頭部が丸くて大きく、鰓蓋には2対4本の棘がある。体色は灰褐色で、3本の黒い横線がある。
  • 日本固有種で太平洋側は茨城県以南、日本海側は青森県以南の本州、四国、九州に分布する。
    県内では相模川や酒匂川において、過去にはかなり上流域から記録があるが、近年は下流域に限定されている。しかし、最近は分布が少し回復傾向にあり、数は少ないながらも、前出の2河川のほか、境川、下山川、引地川、金目川、葛川、早川などから採集されている。
  • 冬季に海で産卵して、稚魚は海で育ち、春先に河川を遡上する。本来の主な生息域は礫石が多い中流域と考えられるが、稚魚の遡上能力が低く、ある程度の段差があると上流へは行けない。神奈川県の主要河川には下流付近に堰や床止めなどの段差があることなどから、分布が下流域に限定してしまったものと推定される。肉食性で魚類や甲殻類などを夜間に食べている。
  • 標準和名は「カマキリ」であるが、昆虫のカマキリと紛らわしくなるため「アユカケ」の呼称が使われることが多い。その「アユカケ」は、鰓蓋にある棘でアユを引っかけて食べる、との伝承に基いている。4本の棘のうち2本はしっかりしているが、通常の状態では鰓蓋に沿って収納されており、ほかのものには刺さりにくい。しかし、本種がひとたび興奮すると鰓蓋を開き気味にし、棘は鋭く前方を向く。
  • スズキ目カジカ科カジカ属
  • 全長10~15㎝。頭が大きくて丸く、鰓蓋に一対の棘がある。体色は茶褐色や暗褐色で、繁殖期の雄は第一背鰭の縁が金色になる。
  • 日本固有種で本州と九州北部に分布すると考えられていたが、西日本より南の個体群は遺伝子的にはカジカ中卵型とされる研究結果もあり、本種の分布域については、今後の精査が必要である。
    過去には神奈川県内各地の渓流域や支流域、湧水の入る河川本流域などで見られたが、環境悪化により生息地が減少。現在は相模川、金目川、酒匂川、早川などの主要河川の源流域と支流域に分布が狭められている。特に最近は、主要な生息地である西丹沢の渓流域においても、台風による増水や土砂の流入により生息数が激減している。
  • 河川の上流域を中心に生息しており、礫底の石の下や石の間に潜んでいる。動物食性で、水生昆虫などの底生動物、落下昆虫、魚の稚魚などを食べている。神奈川県での産卵期は3~5月で、雌は礫石下面に逆さまに卵を産み付け、雄が産着卵を保護する。
  • カジカの仲間は、一生を川で過ごす卵が最も大きい大卵型、海と川を行き来し、卵が大きめの中卵型と卵が小さめの小卵型(ウツセミカジカ)の3タイプに分類され、それぞれ別種とみなされている。現在、神奈川県に生息しているのは大卵型のみである。
  • ナマズ目ギギ科ギバチ属
  • 全長15~20㎝。体色は腹部を除き黒色であるが、繁殖期は黄色っぽくなる。ひげは4対8本である。背ビレと胸ビレに毒棘があるので取り扱いには注意が必要。
  • 日本固有種で東北・関東地方に生息している。太平洋側は青森県馬渕川から神奈川県中村川(現在は絶滅)、日本海側では秋田県米代川水系から福井県九頭竜川水系である。
    神奈川県の現在の生息地は、多摩川水系、鶴見川水系および相模川水系のごく一部の水域に限定され、まさに絶滅寸前である。
  • 水のきれいな河川の上・中流域に生息するが、河川改修等の環境悪化により全国的に減少している。生息域はある程度の水流があり、川岸に淵やカバーなど流れの緩やかな部分がある自然度の高い水域である。底質は砂礫の特に隠れ場所となる浮き石の多いところを好む。岩陰や石の下に潜み,夜間や雨後に活動して水生昆虫などを捕食する。
    東京・神奈川付近での産卵期は6~7月で,水深の浅い石の下面や,水草の根元などの暗所に卵を産む。
  • 神奈川県の生息地は西限および南限に位置するため、特に重要な個体群であるが、現在の生息状況は極めて厳しい状況である。河川のコンリート化や段差による河川の分断に加え、最近は気候変動や近縁の国内移入種ギギの侵入なども確認されており、保全対策が急務である。
  • ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科カワヤツメ属
  • 全長15~20㎝。ウナギのように細長く、成魚の口は吸盤状で、体色は白色や肌色である。アンモシーテスと呼ばれる幼生期は目が皮下に埋没し、口の形状も親とは異なり烈溝状になっている。鰓の穴が7個あり、8個の目に見えることから「八つ目」の名がある。ヤツメウナギの仲間は、現存するほとんどの淡水魚類(真骨魚類)と異なり、円口類と呼ばれるグループに属す、いわゆる生きた化石である。
  • 日本固有種で北海道から滋賀県・三重県まで分布する。
    神奈川県内では、多摩川、境川、鶴見川、相模川、酒匂川、葛川などに記録があったが、最近は相模川と酒匂川のごく一部の支流域に分布が限定されている。
  • 河川の上中流域を中心に生息しており、一生を淡水域で過ごす。アンモシーテス幼生は、泥の中に潜伏して成長し、3年目の秋に成魚に変態する。その後は、消化管が退化して食事もとらず、翌春に産卵して一生を終える。神奈川県での産卵期は3~5月で、集団で産卵する。
  • スナヤツメの仲間は、外部形態からは区別が困難な北方種と南方種に分類されている。神奈川県に生息する在来系は北方種であるが、相模川水系の一部で南方種も採集されている。遺伝子の分析により、これらはコアユに混入して放流された琵琶湖水系と推定されている。
  • コイ目ドジョウ科ホトケドジョウ属
  • 全長4~8㎝。紡錘形で、体色は茶色で黒点が入ることが多い。ひげは4対8本である。
  • 日本固有種で、東北地方から兵庫県までの本州(青森県や和歌山県など一部の県を除く)に生息している。本種は遺伝的に東北、北陸、北関東、南関東、東海、近畿の6集団に細分されるが、どの地域集団も減少している。
    神奈川県では、東は多摩川水系から西は酒匂川水系まで広く分布しているが、河川源流域および支流域に分布が限定されている。
  • 湧水のある流れの緩やかな河川源流や支流に多い。春から夏にかけて水草や落ち葉などに産卵する。雑食性だが、水生昆虫や陸生昆虫などが主食である。冬季には湧水が入る深場を越冬場所とすることが多い。
  • 川崎市生田緑地では、川崎市と市民団体および県が連携して、岡本太郎美術館の建設により消失した生息地の復元に成功した。その後、『生田緑地の谷戸とホトケドジョウを守る会』が主体となって維持管理や調査などを実施してきたが、現在は当『かなたんけん(かながわ淡水魚復元研究会)』へと引き継がれている。
  • ダツ目メダカ科メダカ属
  • 全長4~5㎝。体色は淡い金色で、胸ビレは高い位置にあり、背ビレは後方にある。雌雄で背ビレと尻ビレの形状が異なる。
  • 日本のメダカは1種類とされていたが、2012年にキタノメダカとミナミメダカの2種に分けられ、本種が従来の学名を引き継いでいる。太平洋側は岩手県、日本海側は京都府以西の本州、四国、九州、琉球列島のほか、周辺の島にも分布するが、生息環境の悪化と放流による遺伝的なかく乱のため、各地域の個体群ともに減少している。
    神奈川県でも分布域の縮小が激しく、現在の生息地は酒匂川水系の水田地帯など、ごく一部の水域に限定されている。
  • 平野部の細流や用水路、池、沼などの流れが緩やかな水域に生息し、通常は上層域を遊泳する。水田とその周辺の用水路や池に多いことで知られ、昔から人との関わりが強く知名度が高い。
    雑食性でプランクトン類や水生昆虫などを捕食する。産卵期は春から夏で、水草や水際にある水中の植物の根などに産卵する。
  • 神奈川県では在来の遺伝子を残したミナミメダカの保全活動が盛んで、横浜市、三浦市、藤沢市、小田原市などで、市や市民団体が連携して保全活動を行ってきた。『かなたんけん』では、これらミナミメダカ地域個体群の保全活動を全面的にバックアップしている。